特等席はアナタの隣。
な、何か言わなきゃっ!!
もちろん告白なんて大それたことはできない。


「あ、あの…!!実は…こないだ映画館で先輩達を見かけて…」

思い付くままに喋っていた。
黒崎先輩は何も言わず、その視線を少し鋭くした。
恐ろしくて思わず俯く。


「す…すごく、お似合いでした!!わ、私も、先輩達みたいな、カップルになれたらなって…」

……誰とだよ。
思わず自分にツッコむ。

恐る恐る先輩を見上げると、その端正な顔は、少し呆気にとられたような表情をしていた。

「…す、すみません!でわ…」

早く逃げ去りたい。恥ずかしすぎる。

ガバッと一礼して、立ち去ろうとしたその時、

「…ありがとな」

思わず振り返ったら、とても穏やかに微笑む先輩がいた。


キャーー!!失神しそうっ!!
その微笑みに顔が真っ赤になり、頭から湯気が出そうなほど。

み、みんなに報告しなきゃ……!!

黒崎先輩はそのまま立ち去ったが、私はしばらく動けないままだった。






――それからしばらくして、一ツ橋学園にはある掟ができた。


『黒崎先輩と話したいなら、浅野先輩を褒めろ』


驚くほどに機嫌が良くなる。

これ、学園内でとても有名な話。




●おわり●


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