電波ヒーロー
今もまだ私は、伶さんを俳優の『秋月伶』だと、認めたくないからなのかもしれない。
…自分でもよくわからないけれど。
「…メール、見てくれてる?」
少しの沈黙の後、伶さんが口を開いた。
目線は、テーブルの上の麦茶に注がれていた。
「…うん。」
「そう。」
沈黙。
うまく言葉が出てこない。
返事、してないのがやっぱりよくなかっただろうか。…1回や2回の話でもないし。
そもそも、私から伶さんにメールをしたことが、ない。