Bitter&Sweet




職員通用口を走って通りすぎようとした時



後ろの方で警備員の話し声が聞こえて



「キミ、さっきから病院の玄関うろうろして
何をしてたの?」




「あ、の………」



――――――――――姫?



バッと通用口横にある警備員室を振り返ると



ちょこんと椅子に座って
戸惑った表情の姫がいた




姫?何でここに?
実家に帰ったのに………



「すみません!」




オレは警備員室に飛び込むように入り



「それ、オレのです……」



「え?鈴木先生の?」


驚いた表情の警備員に


「すみません。この子をどこで?」と詳しい話を聞こうとしたら



「………お兄ちゃん」



姫が椅子から立ち上がり
オレの胸に抱き着いた



…………姫?



ギュウッときつくきつくオレの背中に姫はしがみ着いた



警備員は少し困ったように頭を掻いてから



「病院の正面玄関にずっといたんで、何を訊いても答えてくれないし」



「そうですか
すみません。ご迷惑を」



抱き着いたままの姫の背中をそっと撫でて


「おばさん、心配してるよ?」


姫はブンブン首を横にふり



とりあえず、姫を抱えるように駐車場へ連れて行き



車でマンションに帰った



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