Bitter&Sweet
兄妹としての生活
翠サイド
姫が目を覚ましてから
早くも1年半になろううとしてた3月
仕事を終え
職員通用口を通りすぎる
警備員が
「鈴木先生、お疲れ様でした」と頭を下げ
オレも軽く頭を下げた
駐車場で車に乗り込み
エンジンをかける
…3月じゃまだ寒いなと
手を擦り合わせると
ケータイが鳴った
………姫かな?
ポケットから取り出したケータイの画面には
》松雪 母
そう表示してあって
「はぁ~~~」
少し うんざりした気分で
通話ボタンを押した
「はい」
「翠?お母さんだけど」
記憶を無くした姫と暮らしてから オレは松雪のおばさんをお母さんと呼ぶ事にした
だって姫が真似して母親を「おばさん」って呼ぶようになったから
「ね、翠?ホントなの、あの話」
「あの話?」
「南よ!来月から働くって」
「あぁホントですよ」
「ホントですよって翠。大丈夫なの?あの子……」
来月から
また姫は病院に戻る事になった
お母さんは
すっかりやきもきしている