Bitter&Sweet
安心したように言った
鈴木のお母さんの言葉に
「オレは結婚なんかしないよ
ごめん
もう切るね……」
『え?ちょっと…翠…』
お兄ちゃんはケータイを切り
大きなため息をついた
私はお兄ちゃんの肩から身体を起こして訊いた
「ね?今、鈴木のお母さんが言ったことって……」
お兄ちゃんは軽く頭を抱えて
一瞬 考え込む
お兄ちゃんと私は
過去に何かあったんだ
私は そのことを忘れている
お兄ちゃんが昔の話をしないのは、私が知らない方が都合のいい過去があるから?
「ねぇ!お兄ちゃん!」
強く肩を掴み揺らすと
「知らね~よ……」
ゆっくり私に視線を移し
「オレは知らね~よ…
美紅さんが勝手にしたことだ」
「違うよ!美紅さんのことより
お兄ちゃんと私に
何があったの?
私が忘れたことで
普通の兄妹になれたって
どういう意味?」
しばらく、私達はお互いに
にらみ合った
お兄ちゃんは
私の目の奥を見ながら
誤魔化す方法を
探してるみたいだった
私は誤魔化されまいと
1mmだって視線を逸らさない