Bitter&Sweet



困ったように眉をしかめ


お兄ちゃんは口を開いたけど


「…………」


一言も言うことなく
うつむいて口を閉じた



そんな お兄ちゃんの態度に


私は とても不安になる


「ねぇ、お兄ちゃん!
教えてよ…………」


ギュッとお兄ちゃんの腕を掴み


お願いだよ
お兄ちゃん教えて
私が忘れた過去に何が……



お兄ちゃんはうつむいたまま
乾いた声で呟いた


「………知らない方が」


「え?」


「…知らない方が
幸せなことでも?」


ゆっくり顔を上げ
哀しげな視線を私に向け



「知らない方が幸せなことだってあるんだよ?
それでも知りたい?」



   ぎゅぅぅぅっ……


胸が急に苦しくなる


お兄ちゃんが言おうとしてることはわからないけど



お兄ちゃんと私には


何かある


それは きっと良いことじゃない



お兄ちゃんの表情と さっきのケータイの内容がそれを物語ってる



でも



「知りたい。
だって、忘れたとしても
それは私の過去だから」



緊張して声が震えたけど


目は逸らさずに言えた



しばらく私の目を見つめてたお兄ちゃんは



静かにうなずいて


口を開いた――――――――



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