Bitter&Sweet
次にベッドに膝をたて
寝てもらい
お腹を押しながら
「……痛みますか?」
美紅さんはオレを見上げ
「怒ってますか?」
「……今は診察中ですが?」
もう一度、お腹を押し
「痛みますか?」と訊いた
「どこも痛みません。
ただ、あなたに逢いたいから」
オレの目を真っ直ぐ見つめる美紅さんに背を向け
椅子に座り
PCのキーボードを叩く
「暇じゃないんで
仮病は困りますね」
ゆっくり起き上がり靴を履く
美紅さんを背中に感じながら
……今、ナースがいなくて
良かった
なんてことに ホッとする
「すみません………」
本当に申し訳なさそうに
オレの前に立ち
深々と頭を下げた
「……便秘してますよね?」
「え?」
「腸に便が溜まってるようなので、整腸剤を処方しますね」
すっかり黙った彼女は
みるみるうちに顔が赤くなる
だって、仕方ないじゃないか
腸を押したらすぐにわかる
「5日分、出しますから」
「………翠さん私」
「このあと、
お時間ございますか?」
「え?」
「私も
美紅さんにお話があります
だけど、外来診察が何時に終わるかは正確に言えないのですが…」
「いいです。待ってます。
ずっと、待ってます」
そんな必死な表情したって
オレには何も届かないのに