Bitter&Sweet



本郷先生の言葉で


私の中にお兄ちゃんが
だんだん溢れて行く



………心配してるかな?
でも、
まだケータイは鳴らないし



……コトン
気がついたら目の前に
ピンク色の液体が入った
カクテルグラスが置かれてた



本郷先生のグラスには
茶色い液体に
まん丸の氷が浮かんで


………まん丸の氷
クリスタルみたいで綺麗だなぁ



「甘くて美味しいですよ。
召し上がってください
お姫さま」



本郷先生に お姫さまなんて
からかわれてる、絶対に


憮然としながらも口をつけた
カクテルは確かに甘くて
美味しい


本郷先生は
カウンターに頬杖をついて


「お姫さまは」


「やめてください
『お姫さま』って」

本郷先生に呼ばれると
バカにされてるみたい


本郷先生はふっ…て、
目を細め鼻で笑い


「なに?
翠にしか呼ばせないってこと?」



「そういう話じゃないですよ」


「南は」


ドキッ
急に呼び捨てにされて驚いた


「南は、好きな人いないの?」


………好きな人


そう訊かれて浮かぶのは
ただ1人


大好きな人


だけど


愛してはいけない人




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