Bitter&Sweet




―――――――思い出して



頭の中の誰かが叫ぶ



―――――早く早く思い出して




白いもやが立ち込める
はっきり思い出せない幼少期



うっすら覚えてる高校の頃


男友達に告られて、私、断った


………なんで だっけ?


男友達が好きじゃなかったから


うん。そう。それもある


それも ある……………


でも、私、あの時
ううん、ずっと
もっと ずっと前から


好きな人がいた?



―――――思い出して



     ズキッ…


「………痛いっ」


頭に鋭い痛みが走り
思わず頭を抱えた



「…………大丈夫……?」



本郷先生は私の背中に手を添え


「何か思い出せた?」と訊いた



思い出すことを止めると
頭痛は消える



私は首を横に振り



「……はっきりとは
でも、私、もしかして」


「もしかして?」


「忘れたのって家族のこと
だけじゃなくって」



私はもう1人、
大切な人を忘れてる



「私……恋人のことも
忘れてるの………?」




思い出せない


でも、わかる。


私には誰かいたような気がする



何よりも大切な人





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