Bitter&Sweet



ひざの上の私の手に


本郷先生は指を絡め握る



………どうしよう



「諦めようって思ってた。
南が覚えていないなら
だって他に
ぼく達の愛を知る人はいないし

だけど、春から南はぼくのそばに帰ってきた

楽の父親と会った時も
本当は嫌で嫌で仕方なかった

だけど、南がぼくをもう愛していないなら……ぼくには何を言う権利もない」




「………本郷先生…」


「新だよ」


「あ、あの……新………
でも、私、本当に何も」



「覚えていないんでしょう?
だけど南が覚えていないだけで
事実として過去に
存在してることだよ」



困り果ててうつむくと
カウンターに置いたケータイの
LEDが光る



「……あ、お兄ちゃんからだ」



助け船のような気がして
手を伸ばそうとしたら


ガシッと本郷先生が
私の手首を掴む



「離してください。
ケータイが」



「まさかとは思うけど
南、翠に惚れてないよね?」




     ドクンッ…




その言葉に凍りつき
手首を掴まれたまま
見つめ合う



「だったら、ぼくは許さない。
南が幸せになるなら
ぼくは自分の心を殺しましょう


だけど、許されない恋に
南が堕ちていくのなら
ぼくは許さない。」





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