Bitter&Sweet



瞳の奥に強い光を宿し
私をにらむ本郷先生



この人が私の恋人だったの?


全く記憶のない私に
確かめる術がない



そして何より
お兄ちゃんが好きだという
気持ちを当てられて動揺した



ひざの上、
握られた手が解放されて


本郷先生はスッとカウンターに視線を逸らしグラスを持ち口を付けた



本郷先生の視線から解放されて
私も「ふぅ」って
少し息を漏らす



「ごめんね。
こんな風に責める
つもりはなかった。

だけど、翠と南が…あまりにも
近づき過ぎてる気がして」



お兄ちゃんと私は傍目から見て
そんなに おかしいのかな?



うつむくと
本郷先生が優しく微笑み



「南、ごめんね。
本当に言い過ぎた。

ほら、飲んでよ。
仲直りしよう?」



その言葉を拒んで
また、さっきみたいな
雰囲気になるのはイヤ。



勧められるまま、
カクテルを飲む




レストランでもワインを少し飲んだし、カクテルグラスが空になると意識が朦朧としてくる。



「南、覚えておいて
ぼくは君が欲しいんだ」



うとうとして本郷先生が
何を言ってるのか わからない



まぶたが重く閉じていく途中
カウンターに置かれた
ケータイのLEDの青い光が
目に映った



…………お兄ちゃん

お兄ちゃんに電話…………




意識が閉ざされていく


深い眠りに落ちる暗闇の中




「………目を閉じると
全然、似てないんだね
残念だな」



吐き捨てるような
本郷先生の声が聞こえた




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