Bitter&Sweet
翠サイド
姫が新に抱きかかえられ
帰ってきたのは
12時を少し過ぎた頃だった
玄関のドアを開け
姫を抱っこした新の姿を見た時
一体 何がなんなのか
わからなくて
開いたドアを片手で押さえて
呆然と立ち尽くした
「翠、早く中に入れてよ
お姫さまが いくら
痩せっぽっちでも
ずっと抱いてたら、
さすがに腕が疲れるよ」
新が そう言って
やっと我に帰る
「上がるよ?」
新はオレを押し退けるように
玄関に入り
「待てよ!」
ドアを閉めて
靴を脱ごうとする新を止める
「ね、お姫さまのお部屋は
どちらですか~?」
ふざけたような口調の新に
カッとなり
「待てよ!」
肩を強く掴むと
ギュッと眉を寄せ
「やめてよ。
大切なお姫さまが
落ちちゃうよ?」
頬をピンク色に染めて
姫は新の腕の中
クゥクゥ寝息をたてる
「………返せよ………」
「はい?なんだって、翠?」
「いつまでも
抱いてんじゃねぇよっ!
オレの女だ、返せよっっ」
無理やり新の腕から姫を
奪おうとすると
「待って待って翠、落ち着いて
本当に南が落ちちゃうから」
――――――――――――南?
なんて言ったコイツ?
なんでお前が姫を南って………