Bitter&Sweet
バッとオレの肩を掴んだ
新の手を振り払い
「黙れ。お前に関係ない
『南、南』とオレの女を
気安く呼ぶな
これ以上、姫に近づいてみろ
――――――お前、殺すよ?」
オレから姫を奪おうなんて
ふざけたことを考えるな 新
姫はオレの全て
誰にも渡さない
しばらく にらみ合うと
新が ふっ…と笑い
「翠、いつから そんなに
バカになったの?
ぼくは それが1番哀しい」
目を伏せ
深いため息をついてから
「ぼく、帰るね」
リビングのドアに向かい
オレの横を通りすぎる時
「ああ、そうだ」
急に思い出したように
立ち止まる
「ぼく、今日 南に聞いたんだ」
新は身体を少しこちらに
傾けて話した
「記憶がないのって
足元に穴が開いてる
感じなんだって」
視線を横に向けると目が合い
ニヤリと嫌な笑いを新は浮かべ
「可哀想に不安なんだね。
南は、どうして記憶を
失くしてしまったんだろう」
ああって新は首を横に振り
「そばにいてくれた人が
もう少し早く彼女の異変に
気がついてたら」
ドクン……
「愛しい人がもう少し早く
彼女を助けてあげてたら
今も変わらず『みーくん』と
翠を呼び笑ってたかもね?」
足元が崩れ落ちそうなオレを
新は満足そうに見て
リビングを出て行った