Bitter&Sweet




後ろでグダグダ言う
可愛い酔っぱらいは
どうせ朝には
全て忘れてしまうだろう



「………わりゅい女ね…
私のだいしゅきな
おにーたんを
傷つけりゅなんて……」



「あれ?
姫はオレが
嫌いなんじゃないの?」



「しゅきよー
可哀想だから
私がおにーたんと
結婚してあげりゅよ」



「……ホントかよ?」


「ホントよ、ホント
私、おにーたんと結婚すゆ」


姫の言葉に
小さい頃の思い出が
よみがえる



「………子供の頃も
姫はそう言ってくれたな」



「ころものころ?」


「『南ねー、
みーくんのお嫁さんになるー
おっきくなったら
結婚するー』って

そしたら松雪のお父さんが
寂しそーな顔するんだ

オレ、その時は
娘に『パパと結婚する』って
言って欲しかったんだと
思ってたけど………」



おじさんの あの表情は
寂しさの中に
苦々しさも混ざった
複雑な表情だった



オレと姫が兄妹だってことを
隠していたからだろうか


おばさんは普通に
オレと姫がじゃれ合うのを
嬉しそうに見てたな



3歳くらいの
姫の笑顔を思い出して
感傷的になってると


「『みーくん』ってだぁれ?」


「……………え?」


「おにーたん、今
言ったでしょう?
『みーくんの
お嫁さんになるー』って」



あれほど
振り向いちゃいけないって
自分に言い聞かせたのに


オレは後ろを振り向いた


姫がオレを見つめ
無邪気な表情で訊く


「ねー、
『みーくん』ってだぁれ?」






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