Bitter&Sweet




みーくんってだぁれ?



そう訊く姫の
大きな目を見てると
少し焦点がぼやけて


………どうせ朝には
全て忘れてしまう


この酔っぱらいは
全て忘れてしまうだろう



「『みーくん』はね……
姫の恋人だよ」



「コイビト……?」


「姫のことが
好きで好きで仕方がない
世界一、姫のことを愛してる
そんな人だよ」



姫は不思議そうな表情をして
オレをじっと見てる


「みーくんは……
私のことがしゅき?」


「…………好きだよ」



………ギシッ……


床から立ち上がり
ベッドに座る


姫の前髪をかき上げるように
撫でながら



「好きだよ、姫
好きで好きで仕方ないよ」



姫を好きだと言う度
姫の柔らかい髪に触れる度
心臓をわしづかみされたように
胸が苦しかった



「………好きだ、姫
愛してる………」


姫は表情を変えずに
オレを真っ直ぐ見つめてる


「私も……
みーくんがしゅきなの?」


「そうだよ」


オレが はっきり答えると
姫は眉を寄せ
複雑な表情を浮かべた


そして ゆっくり口を開き


「私はみーくんより
おにーたんがしゅきよ……?」



嬉しいのか
哀しいのか
その時の自分の気持ちが
全くわからなかった


ただ心の中
何かが音をたてて
崩れ落ちるのがわかった



崩れ落ちたのは
『理性』とか
そう呼ばれる物だろう



「………好きだ」



想いが口からこぼれると
そっと唇を重ね合わせた






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