Bitter&Sweet
「……お、おはようございます」
朝、キッチンで
朝食の用意をしてると
ボサボサ頭の姫が
おずおずと寝室から出てきた
……夕べのことを
覚えていたら どうしよう
鼓動は早まり
緊張が走る
鍋の味噌汁をかき混ぜる
おたまを持つ手に力が入る
「…………おはよう」
姫の方を向かず
素っ気なく言うと
キッチンの入り口の壁に
姫は もたれかかり
「あの~、私、夕べ
どーしたんだっけ?」
申し訳なさそうにする姫に
ホッとして
「また覚えてないの?
酔って寝ちゃったんだよ
オレ、姫のマンションの住所
忘れちゃって
だから ここに……」
「あ~、
また、やっちゃったんだ
ごめんね、お兄ちゃん」
罪悪感に胸が
チクチク痛みながらも
「ううん」と
首を横に振って
姫を振り返った
目が合った瞬間
姫は気まずそうに
パッと視線を逸らす
「ね?私さぁ………」
うつむいて
姫が言いにくそうに
口を開いた
「ん?」
「私さぁ……
なんか変なこと
言ってないよね?」
………変なこと
言ったのも
したのも
オレですけど
「……言ってないよ」
あ、でも
女たらしだの嫌いだの
言ってくれたっけ
「それなら良かった
シャワー借りるね」
姫は「へへ」って
愛想笑いみたいなのを浮かべ
浴室に消えた