Bitter&Sweet




遠く遠くから
虫の音が
かすかに聞こえて


ざわざわする胸の音と
重なり合う




「お兄ちゃん……」


しばらく間があいたから
疲れて寝ちゃったかなって
思ったけど



「………ん?」



お兄ちゃんの声は
小さくかすれてた




「お兄ちゃんと私は
別々のお家で育ったんだよね?」


「……そうだよ」


「じゃあ……、
こうして一緒に
キャンプとか
旅行するのは
初めて………?」


「いや、隣で暮らしてたし
鈴木の家は病院だから
両親共に忙しくて
オレは松雪で育った
みたいなモノだから……

旅行とかも、一緒に行ったよ」


「そっか………」


私が口を閉ざせば
すぐに沈黙が流れる


隣で横になる
お兄ちゃんは
微動だにせず
まるでお地蔵さまみたいだ



「……ね、お兄ちゃん?」


「………なぁに?」


「お兄ちゃんと私って
どんな兄妹だった……?」


「……どういう意味?」


「記憶がなくなる前は
どういう感じだった…?」


知りたい
記憶を失う前
私はお兄ちゃんに
どう接していたのか


………バサッ


お兄ちゃんは起き上がり
私を見つめ



「何で、そんなことを訊くの?」



暗がりで
表情はよく見えなかった
だけど、お兄ちゃんは
怒ってるように見えた




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