Bitter&Sweet
――――――――――ガラッ
ハァ、ハァ
息を切らして姫の病室を開けると
――――――――あぁ、姫
姫がベッドの上
上半身を起こしていた
夢じゃないよな?
夢じゃないよな?
2週間ぶりに
姫が目を覚ました………
「姫…………」
震える声で一歩 彼女に近づくと
「翠(ミドリ)」
ベッドサイドにいた松雪の母が口を開いた
「翠、南は―――――――」
だけど
オレの目には姫しか映らない
そのまま、姫のベッドに近づき
「姫。姫……」
膝に置かれた彼女の手を掴もうと
手を伸ばすと
―――――――――ビクッ
怯えた表情で姫は手を引っ込め
身体を震わせた
「……………姫?」
そして姫は
「…………誰?」
オレを見つめ そう言ったんだ
……………誰?って……
呆然と立ち尽くすオレに
「翠。
南ね、記憶喪失なんだって…」
「……記憶喪失………?」
ベッドの上
胸元で手をギュッと握りしめ怯える姫
じゃあ、オレの事も……
「南、何も覚えていないの」