Bitter&Sweet
「姫」
そう声をかけると
ビクッと肩を震わせた
オレは床に膝をつき
姫と目線を合わせ
「大丈夫だよ、姫
何も怖くないからね」
「……………」
「大丈夫だよ
オレがずっと守ってあげるから」
「……あ、なた、は、誰?」
ぎこちない言葉で姫は問いかけ
「オレは――――――」
「翠!」
ベッドの向こう側で松雪の母が険しい顔つきでオレを見た
………忘れてるなら
そっちの方が幸せって事を言いたいんだな
実の兄妹で愛しあった事なんて教えるなと
松雪の母の目は言ってる
わかってるよ
今、そんな事を言ったって
姫を混乱させるだけ
神様はオレの願いを叶えてくれた
彼女の中のオレを消す事で
「オレは」
いいんだ
だって姫が目を覚ました
オレはもう何も望まない
「オレは鈴木 翠(スズキミドリ)と言います。
姫……キミのお兄ちゃんだよ」
キミが生きているなら
何も望まない
ホントだよ