Bitter&Sweet
出逢い

南サイド




ナースステーションの奥



私はシーネ(点滴をしてる子供の手首を固定する板)を作ってると



「姫子!
513の楽(ガク)の事なんだけど」



本郷先生がツカツカと こちらに来たけど


黙々とシーネの角度を調整する



「姫子?返事くらい……」



「『姫子』じゃありません」



「え?」



「私は『姫子』じゃありません
松雪 南です!」



キッと本郷先生をにらむと
きょとんとして



「まぁ、どうでもいいじゃない」



「よくないです!
私、子供たちにまで『姫子』って呼ばれてるんですよ?」



本郷先生が姫子姫子って私を呼ぶから

入院中の子供たちまで『姫子』って………



「はぁ」って本郷先生はため息ついて



「松雪さん、513の楽の事ですけど」


若干、棘のある口調に聞こえたけど


「はい。513の鴨居 楽(カモイガク)くんですね?」



「二日間ステロイドを投与して
血中酸素濃度も安定したし
チアノーゼも見られない
酸素とモニター外して明日 個室から大部屋移って大丈夫だから」



「はい。わかりました」



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