Bitter&Sweet
――――――――ガチャン
肩にバスタオルをかけて
濡れた髪を拭きながら
お兄ちゃんはキッチンに入ってきて
「姫!どうした?
こんなところに座って」
「あ、えっと、何でもない」
スクッと立ち上がると
「疲れてんじゃないのか?」
お兄ちゃんは心配そうに
私の頬を両手で包みこみ
「大丈夫か?」って訊いた
――――――――キュウ……
濡れた髪
綺麗な瞳
熱い手のひら
胸が苦しくなる
「大丈夫だよ………」
そっと
お兄ちゃんの手を振り払う
「……あ、そうか。大丈夫なら……いいんだ」
お兄ちゃんは
少し淋しそうに笑って
冷蔵庫を開け水を取り出した
グラスに水を注ぐお兄ちゃんの横顔を見つめて
「ね、お兄ちゃん」
「なに?」
「お兄ちゃんは どう思ってるの?」
「どうって?」
「私の失くした記憶について」
ミネラルウォーターのペットボトルのキャップを閉める手がピタリと止まり
お兄ちゃんは表情を固くして私を見た