Bitter&Sweet



家のドアを開けて



「ただいま……」



目に入る見覚えのない女性の靴



……あれ?
姫、こんな靴 持ってないよな



玄関で考えてると



「おかえりなさいませ
翠さん
お仕事お疲れ様でした」



リビングのドアから出てきたのは



「みっ!美紅さんっ!」



オレが驚き、後ずさると
美紅さんは満面の笑顔で


「はい」



「『はい』じゃなくて、なぜ、あなたが ここに……」



「あの、図々しいかと思ったのですが…
翠さんも南さんもお仕事忙しいと思ったので
お夕食の用意をさせていただきました」



混乱する頭の中で



「…………姫」


「え?」


「姫…いや、妹は……」



「ああ、南さん。
なんか、お疲れのご様子でお部屋で休まれてます」



最悪の事態じゃないか


まさか美紅さんが家に押しかけてくるとは……



早く、早く 姫に誤解を解かなくちゃ



慌てて靴を脱ぐと



口元に笑みを浮かべたままで美紅さんは


「南さんに私の事は秘密でした?」



「え?」



「翠さん。
なんだか南さんだけには知られたくなかったって顔してるから」



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