吸血鬼と紅き石
「…その様子だと、唇に辿り着けるのはまだまだ先のようだな」

そんなリイエンの様子に、青年がクツリ、とからかい含めて喉を鳴らす。

「レンバルト!」

からかわないで、とリイエンは怒鳴る。

悪い悪いと肩を竦める青年を見ながら、ここに来てから万事この調子だと溜め息を吐いた。

男のペースに乗らないように、と気を遣っていても、何時の間にかペースに乗せられてしまっているのだ。

この男の行動ひとつ、言葉ひとつで心臓が破裂しそうにバクバクいってしまう自分にとっては、本当に堪ったものではないのだ。


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