吸血鬼と紅き石
「俺の住む城…いや、殆どの吸血鬼の住む城は、時空の狭間と言えども国と国との間の空間に造られてんだ」

言外のリイエンの疑問を察して、レンバルトが説明をし出す。

「その方が人間の様子を観察したり、餌を捕まえに行く手間が省けるんだ」

あっさりとしたその理由に、それを聞いて最近まで己は人間だと思い込んでいた、いや今も半身に流れる吸血鬼ではなく自分は人間なんだと言い張るリイエンにとっては何となくいい気はしない。

そんな気分が顔に出ていたのか、レンバルトは肩を竦めてみせる。

だがどう言ったら良いのか分からなくて、リイエンは言葉を吐き出す代わりに、馬車の窓から黄昏に暮れゆく空を眺めた。


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