吸血鬼と紅き石
「今晩はここでお休み下さいませ」

強引に連れて来られた部屋にリイエン一人を残し、女が去って行く。

強く掴まれていたせいでヒリ、と痛む手首を押さえながらリイエンが部屋の中を見回せば、質素ながらも整えられた部屋が目に入った。

家具は何もない。

明かりも何もなく、月明りだけが差す部屋に置かれているのはベッドひとつだ。

(何、だろう)

先程から感じ続けている違和感が、胸を騒がせて落ち着かない。

男であるレンバルトは兎も角、ターニャとまで離されてしまった。

リイエンはお守りだと渡されたネックレスを握り締めながら、傍らのベッドへと腰を下ろした。




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