吸血鬼と紅き石
「……え?」

その拍子、何やら己の足に何か固い物が当たっている違和感を覚えて、リイエンは眉を寄せた。

何か入っているような己の服のポケットへ手を入れたリイエンは、探り当てた指先が取り出したそれを確認した途端に息を呑む。

「…こ、れ…」

己の掌の中、月の光を受けて鼓動を打つように光り輝くのは血のように深く暗い色をした、拳大の石。

何なのか分からないこの石は、レンバルトの城へと置いて来た筈だった。

ダヤンに出立する前に戸棚の引き出しへと、奥深くしまい込んで来た筈。

ここへと持って来た覚えなど、ない。





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