吸血鬼と紅き石
(まさか)

己が知る、唯一の吸血鬼の姿が脳裏を過ぎった。

心臓が嫌な音を立てて激しく高鳴った。

背中をじっとりと、汗が流れていく。

「灰銀の色彩を持つ吸血鬼が村人全員の夢に出て、今日村に来る予定の金の少女が、我らが渇望する紅き石の持ち主だと告げたのだ」

老人の言葉に、更に翡翠の瞳が見開かれた。

(灰銀の色彩を持つ吸血鬼)

聞いたばかりのその言葉が、リイエンの頭を支配していた。

思い当たる吸血鬼なんて、一人しか知らない。

だって、なんで、どうして。

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