吸血鬼と紅き石
(…吸血鬼!)

レンバルト以外の吸血鬼と出会うのは、これが初めてだ。

しかもこんなに近くで。

心臓が何か分からない力に押し潰されそうになっているのに、それとは逆にやたらと早鐘を打っている。

…でも、何故だろう。

その瞳にリイエンは既視感を覚えた。

「…な、何だお前は…」

誰も居なかった筈のその場所、見たこともないその青年に、村長の狼狽した声が掛けられた。

彼が何者なのか、きっと分かったのだろう。

村人達の恐れおののく声や、助けを求める声。

「煩い、クズ共が」

青年がそう告げて村人達をねめつけた。

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