吸血鬼と紅き石
(――――こいつが、父を!)

身体中の血液が、沸騰しそうに熱い。

怒りで、頭がおかしくなりそうだった。

「お前が…!」

どうして、父を。

言葉にならない想いが、怒りのままに吐き出した言葉に籠る。

「…どうして?」

目の前の吸血鬼が、面白いとばかりに喉を鳴らす。

「決まっているだろう、お前の父親…いや、オルフェルトが俺に恥をかかせやがったからだよ!」

食い入るようにリイエンの顔に己のそれを近付け、ニタリと男が嗤う。

「お前がレイチェルを狙うからだ」

レンバルトが忌々しげにザーディアスと呼ばれた男を睨む。

レイチェルは母の名だ。

その母を狙って、父に恥をかかされた?

――――当然の報いじゃないか。

リイエンの胸に新たに炎に似た紅蓮の怒りが沸き起こる。


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