吸血鬼と紅き石
「おま、えなんか！お前なんか！父に殺されてしまえば良かったんだわ！」

翡翠の瞳から、透明な雫が零れ落ちた。

同時に零れ落ちる呪詛の言葉を、リイエンは男の胸を叩く拳に込める。

だがそんなリイエンの怒りにも、男はどこ吹く風と愉しげだ。

そんなリイエンの様子を嗤いながら、ザーディアスはリイエンを盾へと使い、レンバルトの攻撃をいなす。

男の笑みにレンバルトが忌々しげに舌打ちした。

「相変わらずやり方が汚ねェな、ザーディアス」

「フフフ…何、この娘ごと俺を引き裂けば片は付くだろうがよ」

挑発するザーディアスの言葉にレンバルトはフン、と鼻を鳴らした。

「倒すのはお前だけだ。リイエンは助ける」

そうきっぱりと告げるレンバルトを、今度はザーディアスが鼻で笑い返した。

「お前に出来るか…あァ、そろそろ頃合いだ」

リイエンの腕を掴んだままのザーディアスがそう告げた瞬間、二人を包む景色がざわりと揺れた。

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