吸血鬼と紅き石
第十章

異世界

頭が痛い。

ひどく吐き気もする。

乱暴に離された腕もそのままに、リイエンは地面へと座り込んだ。

揺れそうになる視界を堪えて顔を上げると、辺りは元居たあのダヤン村の小屋ではなく、辺り一面白。

座り込んでいる己の足元も白であれば、見回す限り、白・白・白。

白一色の世界はその色をただ主張するのみで、周りに何もなく、ただリイエンと傍に立つ男だけが色彩を有していた。

勿論他を圧倒する程の存在感を持つ、レンバルトはいない。

いるのはリイエンと、ザーディアスと呼ばれていた男だけ。

きっと自分はこの男に異空間に連れて来られたのだとリイエンは悟る。

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