吸血鬼と紅き石
「つまりお前も『それ』を持ってる、って訳だ」

レンバルトの長い指が、リイエンの左胸を指差す。

リイエンはその行動に肩を震わせ、心臓を守るように重ねた手で拳を握る。

トクッ、トクッ、トクッ、と鼓動に合わせて心臓が震える。

(そうだ)

さっきは考え付かなかったが、父が吸血鬼ということは、“紅き石”はリイエンにも関係があるものになるのだ。

(私の心臓が、吸血鬼を滅ぼす?)

だが、ただの言い伝えだと思っていた話が、急に引き出されてもすぐには信じられない。

しかもそれが、自分の身に起こった話なら尚更だ。

「は、母も吸血鬼だったかもしれないじゃない!」

リイエンは母を見たことがない。

リイエンが生まれて数年後に亡くなったと聞いてはいたが、自分は幼かった為に母の顔も姿も記憶には残っていない。

情報としてあるのは、優しくて悲しげな目をした父が、語ってくれた母の話だけ。
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