吸血鬼と紅き石
「そうだな…腕か、足の一本でも、もいでしまおうか」

あっさりと口にされたそれに、リイエンは噛み締める唇に力を籠めた。

「そんなお前を見れば、きっとあいつも怒り狂うだろう」

あいつ―――レンバルトを怒らせることこそが目的だろうと、目の前の吸血鬼を見ていれば簡単に想像が付く。

自分が父……男の言葉を借りれば昔恥をかかせたという同族の娘だという事も、今の奴にとってはきっと二の次だ。

今の興味はきっと…灰霧の王と呼ばれる力に溢れた吸血鬼、レンバルトにある。

彼にどう怒りを与えるか…いや、どんな屈辱を与えるかでその思考は満たされているに違いない。

奴にとって自分は、その為の駒に過ぎないのだから。






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