吸血鬼と紅き石
もしかしたら母が吸血鬼だという可能性もあるのだ。

自分が吸血鬼だなんて、思いたくはないけれど。

だが。

「いや、そいつは有り得ねェな」

レンバルトの一言が簡単にその疑問を打ち消した。

「俺も会ったことがあるが…お前の母親は人間だ」

真っ直ぐにリイエンを見る青年の目は、嘘を付いているとは思えない。

「母を、知っているの?」

「ああ。いい女だったよ」

どこか遠くを見るレンバルトの表情に、リイエンは口を閉じる。

もしかしたらこの目の前の青年は母を好きだったのかもしれないと、直感に近い所でそう感じる。

誰かからの口でしか語られない、母のこと。

父の口から語られる母は、何度も聞いて来たけれど。

この青年から語られる母は、どんなものだろう。

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