吸血鬼と紅き石
「何の力もないくせに、よくも煩くほざくものだ」

目の前の吸血鬼から発せられる目に見えない圧迫感が、リイエンを苛む。

まるで指を掛けられたかのように喉が詰まって、呼吸が上手く出来ない。

「来る筈もないレンバルトの奴を待つまでもない…こんなほざくだけの小娘、早々に葬ってくれるわ」

怒りに満ちた吸血鬼の長い腕が、リイエンの胸元を掴もうと伸びて来る。

だが。

バチィッ!

すぐそばで大きな音がしたかと思うと、リイエンに触れようとしていた男の手は不可視の力によって弾かれた。

(…今、なに、が…)

驚いているのは自分だけではないようだ。



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