吸血鬼と紅き石
「分かったぞ…。その牙、オルフェルトのモノだな」

父の名を口に出されて、今度はリイエンが目を見開いた。

「成程…牙には特に眷族の力が宿る…。娘のその身を守る為に、レンバルトが渡したのか」

男の言葉に、リイエンはこのネックレスを自分に授けた時のレンバルトの言葉を思い出した。

『お守りだ』

これは何なのだと尋ねた答えの、いずれ分かる、とはこういう事か。

(お父、さん)

死して尚、自分を守ってくれた乳白色のその小さな石を、リイエンは掌で握り締める。

大丈夫、父が守ってくれている。

それだけで心が強くなった気がする。









< 196 / 263 >

この作品をシェア

pagetop