吸血鬼と紅き石
「お前は馬鹿馬鹿しい言い方すりゃ、禁忌の子供、ってヤツだ。俺達吸血鬼は自分達を滅ぼす、と言われてる力を屠る為。人間共は吸血鬼から自分の身を守る為。ソイツを奪い合う、って訳だ」

リイエンの興味を、青年の言葉が絶つ。

(奪い、合う…?)

胸の前の手を、リイエンはキツく握る。

「あなたも、私の心臓を狙ってる?」

己の存在を滅ぼすものなど、目障りな筈だ。

その為にここに連れて来たのかもしれない。

「…さてな。どう思う?」

返される問い掛けにリイエンは改めてレンバルトの顔を見つめる。

彼も吸血鬼だ。

…なのに不思議と恐怖は感じなかった。

そう言えば最初から、青年のその正体を知った時も恐怖は感じなかったのだ。

どうしてだろう、何故怖くないのだろう。

父を知っていたから?

父の死を悼んでくれたから?

幾つも浮かぶ疑問に対する問い掛けだが、どれも違う気がする。

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