吸血鬼と紅き石
「ああ、可愛いリイエン。お前の顔をよく見せておくれ」

抱き付く娘の頬に優しく手を滑らせ、男は促してみせる。

素直に顔を上げた娘に彼は瞳を細めた。

「まったく…この男の言う通り、お前にはまだ何の力もないというのに危険な事ばかりするね」

ハラハラしたよ、とオルフェルトは苦笑した。

「だって…許せなかったんだもの」

そんな父に、罰が悪そうに彼女はむくれて答えてみせる。

「…それより、父さんどうして?あたし、てっきり父さんは―――」

死んでしまったと思っていた、と言葉には出来ずに娘は俯く。



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