吸血鬼と紅き石
「…こうしてお前の前に出て来てはいるが、私は生きている訳ではないのだよ」

柔らかく、優しい声で言い聞かせるようにオルフェルトは紡ぐ。

「お前も知っての通り、私はあの晩、この男に殺された」

父の言葉に顔を上げた少女の瞳が、やはりあれは夢ではないのだと悲痛に揺れる。

「この男も話していた通り、私の瞳を与えるのと引き換えに、リイエン―――お前には手を出さないと誓わせた。…だが執念深いザーディアスのことだ、その誓いは守らぬだろうという事は容易に想像できた。だから私は瞳に僅かな意識と力を与えておいたのだよ」

もしもザーディアスが誓いを破り、本気でリイエンに危害を加えようとした時の為に潜んでいたと伝える父、オルフェルトの言葉に、翡翠の瞳が彼を見つめた。

それはきっと、嘘ではないのだと―――悲しいことにそう分かってしまう。


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