吸血鬼と紅き石
「―――チッ」

鋭い舌打ちを漏らした青年は、忌々しげに降り立ったばかりの空間を睨み付けた。

青年の周りは古さを感じる石造りのような壁が占めるのみ。

見上げても果てのないように感じるそれは、きっと宙から眺めてみたとて同じ事だろう。

この空間にいるはずのリイエンを追って飛び込んでみれば、迷路のようなこの有様。

「結界か…。ザーディアスの馬鹿が、中々面倒なモン張ってくれてんじゃねーか」

苛立ちを隠しもせずに口悪く罵るのは、銀にも見紛う灰色の髪と瞳の持ち主――――レンバルトだ。

確かに自分と同じ空間にリイエンがいる―――そう分かるのに、彼の侵入を防ぐようにぐるりと幾重にも結界が張られているのだ。

< 207 / 263 >

この作品をシェア

pagetop