吸血鬼と紅き石
「時間がねェ、って時にイヤな野郎だ」

心底不機嫌に呟けば、彼の懐にざわざわと何かの気配が伝わる。

「こら。間違っても出てくんじゃねーぞ?お前らなんかはこの空気に触れでもしたら最後、あっさり消滅しちまうからな」

だから大人しくしていろ、と告げながら、青年は改めて己の周囲を見つめる。

自分の行く手を阻む壁は、内側からは出入り自由、外部からの侵入者は徹底排除。

そしてここから他の場所へと飛んだとしても、この場所に戻って来るように巧妙にループされているのが分かる。

恐らく今この空間に来る用があるのは、恐らく自分だけだろう。

つまりは完全に青年の侵入を拒む為に造られた結界、ということだ。


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