吸血鬼と紅き石
「でもま、最後の最後で俺を呼べたからな…だからぎりぎり合格、ってとこさ」

リイエンの頭をその掌で撫でて、レンバルトは視線をザーディアスに向ける。

「その様子じゃ、オルフェルトに手酷くやられたな」

まあ当然の報いだろうよ、とザーディアスの瞳を見た彼は大仰に肩を竦めてみせる。

「…黙れ」

喉の奥から、腹の底から出したような低い声でザーディアスが唸った。

「黙れ、レンバルト。…貴様、ヴェイラはどうした?」

暗黒の二つの闇がレンバルトを睨め付けた。

(ヴェイラ?)

己の知らない名前に、傍らの吸血鬼を見上げてみるも、長身の男から答えはおろか、視線すら返って来ない。



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