吸血鬼と紅き石
「その様子だと葬ったか――――可哀想にあの女…あんなにもお前のことを愛していたのに」

投げ掛けた問いに答えぬ男に、ザーディアスは赤い唇を下世話に歪めてみせた。

(…愛して、いた?)

ザーディアスの言葉に、ドクリと心臓が高鳴る。

(レンバルトを、愛して、いた)

確かめるように、心の中でもう一度繰り返す。

…そういえば確か、レンバルトが来る前にザーディアスが言っていた気がする。

『奴に恋慕する女に、空間ごと閉じ込められてそれっきりだ』

…そう、確かそう言っていた気がする。

ここで無関係な名前を出すとは思えない。

きっと『ヴェイラ』という名前の吸血鬼が、その女、なのだろう。

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