吸血鬼と紅き石
(何か、面白くない)

自分でも訳の分からないモヤモヤとした感情が、胸を占めるのをリイエンは感じる。

さらにそのレンバルトが、そんな自分を見て愉しそうに笑っているから何だか腹が立つ。

「まァ、時と場合が関係なきゃ、俺にとっては喜ばしい傾向なんだけどな」

そう抜け抜けと――――実際何が喜ばしい傾向なのかは良く分からなかったのだが、機嫌良さそうに告げるレンバルトを、何やら殴ってやりたくなったのも気のせいではないだろう。

…気のせいではない、のだが、いかんせん今はそんな状況ではない。

「ヴェイラを唆して、葬るように仕組んだのはお前だろう」

内容にそぐわぬ程淡々とした口調でレンバルトがザーディアスに告げる。

「…さあな。訳も分からぬ奇妙な事を言うものだ」

対して問われたザーディアスは、芝居がかった仕草で大きく手を広げてみせた。

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