吸血鬼と紅き石
「…滑稽だ。灰霧の王などと呼ばれる男が、人間の娘に惚れたなどとは…」

傑作だとばかりに、ザーディアスは高笑いする。

「何がそんなに面白いのかよく分からんが…笑いたければ笑えばいい」

対するレンバルトは、馬鹿笑いを続けるザーディアスを半ば呆れた様子で眺めている。

「―――ただ」

続いた一言と共に、前触れなく目の前の男の腕が斬り裂かれた。

ごとん、と斬り落とされた腕が、鈍い音を立てて床へと落ちる。

「…ぐ、ッ!レンバルト…貴様ァ!」

血の噴き出す途中から喪った腕を押さえながら、ザーディアスが吠えた。


< 232 / 263 >

この作品をシェア

pagetop