吸血鬼と紅き石
「させんよ」

だがそんなザーディアスを、灰霧の王が見逃す筈もなく。

新たに王の力を背中に受けて、ザーディアスであった吸血鬼は形をなくして霧散した。

吸血鬼の消滅と共に闇の晴れていく空間に残ったのは、王と呼ばれる青年と、眠る少女のみ。

闇が晴れ、元の真白い空間が戻ってくる。

「手間、かけさせやがって」

目を眇めた王の呟きを、だから聞く者はいなかった。






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