吸血鬼と紅き石
赤い顔して己を睨む少女を、楽しそうに青年は見つめる。
その顔をむくれたまま再度睨み付けようとした少女は、次の瞬間あ、と目を瞠った。
「ザーディアス…あの男は!?」
勝手に自分を眠らせた事など言いたい事は多々あったが、父を殺し、自分をこの空間に連れて来た吸血鬼の姿が見当たらない。
「終わったよ」
己に斃した男の事問う少女に、青年は簡素な言葉で闘いの結末のみを告げた。
返された短い言葉に、リイエンはレンバルトをじっと見つめる。
顔にも身体にも、どこにも傷は見当たらない。
だが良く見れば、彼の纏う黒衣のあちこちにほつれたり、破れていたりと闘いが激しかった跡が見て取れる。
…きっと、怪我もしたのだろう。
だけど自分が心配するからと、黙って治したのだ。
そうして自分には何も見せず何も告げず―――こうして何でもないふりをしているのだ。
その顔をむくれたまま再度睨み付けようとした少女は、次の瞬間あ、と目を瞠った。
「ザーディアス…あの男は!?」
勝手に自分を眠らせた事など言いたい事は多々あったが、父を殺し、自分をこの空間に連れて来た吸血鬼の姿が見当たらない。
「終わったよ」
己に斃した男の事問う少女に、青年は簡素な言葉で闘いの結末のみを告げた。
返された短い言葉に、リイエンはレンバルトをじっと見つめる。
顔にも身体にも、どこにも傷は見当たらない。
だが良く見れば、彼の纏う黒衣のあちこちにほつれたり、破れていたりと闘いが激しかった跡が見て取れる。
…きっと、怪我もしたのだろう。
だけど自分が心配するからと、黙って治したのだ。
そうして自分には何も見せず何も告げず―――こうして何でもないふりをしているのだ。