吸血鬼と紅き石
「馬鹿。レンバルト、あなた馬鹿よ」

どこまでも自分に優しくて甘い吸血鬼の胸を、リイエンは握った拳で何度も叩く。

彼の友人の娘だという欲目はあれど、こんな無条件に優しくされて大切にされたら、どうしていいか分からない。

「何度も連呼するな、っての…」

ぼやきつつも労わるように、髪に口付けられる。

ドクン、と胸が高鳴った。

己を包む優しいぬくもり、鼻腔を擽る彼の匂い。

抱き付いたのは己からだが、今更意識し過ぎてどうにもならない。

どうしよう、と半ば本気で思った時に、頭上で忌々しげな舌打ちが聞こえた。


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