吸血鬼と紅き石
第一、父だってそんなこと望んでなんかいない筈だった。

何時もリイエンが泣いていると、優しく抱き締めて、決まってこう言うのだ。

『私の可愛いリイエン。悲しみの雨ばかり降らせていないで、その可愛い瞳を私によく見せておくれ』

と。

これからどうしたら良いのかも、何をすれば良いのかも分からない。

だが、ただ悲しんでばかりいるのはもう終わりだ。

「…取り敢えず、あの人に会わなくちゃ」

レンバルト。

父の友人だというあの、吸血鬼の男。

良く考えれば、ひどい事をしてしまった。

助けてくれたにも、心配してくれたにも関わらず、あの態度。

(謝らなくちゃ)

手で髪を梳いたりと軽く身なりを整え、リイエンは青年を捜しに部屋を出た。

< 26 / 263 >

この作品をシェア

pagetop