吸血鬼と紅き石
「…ったく、そういう所はレイチェルに似てやがるな、お前は」

くしゃり、と呆れを孕んだ優しい瞳で髪を撫でられる。

レイチェルとは母の名だ。

(やっぱり、母のことが好きだったのかしら)

その優しいような物憂げなような何とも言えない瞳に、リイエンはそう思う。

「掃除でも何でも気が済むなら好きにやっていい。俺は今から少し出掛けるが…何かあったら呼べ」

もう一度髪を優しく撫でて青年が告げる。

「呼ぶ、って…どうやって?」

出掛けるとわざわざ言い置いていくのだ。

姿の見える、声の届く範囲に行くとは思えない。
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